「この本おもしろかったよ!」
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 はじめの一歩
(画像は37巻です)

はじめの一歩 1〜48巻(2000,7現在)

森川ジョージ/著
講談社
マンガというと、「マンガばかり読んで〜」と避難の対象になりがちだが、私はマンガはある意味、芸術だとさえ思っている。絵とストーリーを説明でなく会話と絵だけでつないでゆく。なんてスゴイ作業だろう。そして読者にその興奮が伝わるのだから。私は少年マンガが好きである。作者はストーリーをいい加減に作っていないし(それはマンガ全般にいえると思うのだが)結構笑いとともに知識も得ることができるのである。

「はじめの一歩」は私にとって喉が乾いたときの清涼飲料水のような役割を果たしているのがマンガ(本)だ。私はこのマンガ本を元気がないときに読みふける。いわゆるボクシングマンガだが、ついつい夢中になって気が付いたらすごく時間がたっていたこともしばしばだ。

いじめられっ子だった一歩(高校生)。ある日いじめられているところを鴨川ジムに所属する鷹村に助けられ、ジムで目を覚ます。ボクシングをするジムの人たちをみて一歩は「みんな格好いい、本当に強いってどういうことだろう。」と考える。「ぼくも強くなりたい」鷹村に話すと、本当にボクシングをやりたいならと、課題をあたえる。期限は一週間。木から落ちてくる木の葉を十枚をシャブだけで、一枚も落とすことなくこぶしに握りこむことが出来ればボクシングを教えてやるというのだ。そしてそれをやってのける。

一歩は釣り船屋の孝行一人息子でいつもお客さんの重い釣り道具を運び、揺れる船でもうまくバランスを保つことができる。このことが、彼のボクシング人生にとってかなりのプラス材料となるのだ。足腰が強いため踏み込みが深くできたり、バランス感覚に優れているという点だ。力強い左のパンチはずっと彼の武器だ。とことん相手を研究し、強い相手に挑んで行く。彼のひたむきさと、とことん練習して自信をつけてゆく姿がとても好きだ。好きなモノをみつけて、本当に活き活きとしている一歩。それだけだと真面目なだけのマンガになってしまうが、私がこのマンガを好きなもう一つのわけがある。一歩を囲む人たちの他ならぬキャラクターだ。どいつをとっても個性的で、会話の端々で笑わせてくれる。もちろん真面目すぎる一歩も真面目すぎるがあまりついつい笑いをさそうのだ。

あるときジムの会長に「ガゼルパンチ」を教えてもらう。ガゼルとはカモシカのことだという。相手はホワイトウルフと呼ばれる、オオカミの牙と呼ばれるパンチを持った男だ。一歩は辞書を調べる。「カモシカ」=岩を飛び越したりする柔軟なバネをもった動物。天然記念物。と書いてある。「天然記念物?!」とへんなところに感動して辞書にかぶりつく一歩は思わず笑いをさそう。先輩である鷹村は「でも、オオカミとカモシカってどっちがつよいんだろうな〜」といって一歩を固まらせるのだ。たしかにオオカミとカモシカだったらオオカミの方が強そうだ。でもあくまで、それはパンチの名前であってお互いの動物ではないのだが、そんなところを意地悪く相手をつつく、鷹村のそういうセンスも捨てられない魅力だ。対戦相手にしても、登場人物が年齢が若いのもあるんだろうが、どことなくみんな少年というか、子どもっぽい部分をもっている。じいさんである会長でさえ…。しかし彼らは試合になると男らしい顔に変身しているのが不思議なところだ。でも男の人というのはこういう瞬間があるんだろうなとは想像できる気がした。

現在も「はじめの一歩」は週刊少年マガジンで連載中で、単行本でも48巻もでている。元気のないときに読んでみると元気になる。ためしに読んでみる?ちなみに私はこの本でクマから逃れられたことがある。というと大袈裟だが、日光でクマらしき影をみたことがあるのだが、その時、クマは前と後ろ足の長さの違いで、登りはめっぽう早いが、下りには弱いという会話をしている場面があり、私達は坂道を下ったのだった。読んでいて良かったと心から思った。知識とユーモアのセンスを忘れない本はいつまでも私の中に残っている。

作者はよく、取材のために連載を休むことがあるが、私は立派だと思う。がんばってほしい。だからマンガをたかがマンガと馬鹿にしてはいけないのだ。そして、本もいいけどマンガもいいゾとすすめたい。マンガも奥が深いのだよ。楽しいものは楽しいし、好きなモノから知識が入ってくることもある。(文:やぎ)