「この本おもしろかったよ!」
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地域雑誌谷中・根津・千駄木 其の五十七
(表紙は其の五十七)

地域雑誌谷中・根津・千駄木

 
谷根千工房
地味なのに魅力的な雑誌を見つけた。地域雑誌というだけに、界隈のお店の広告が入り、地域問題や土地にまつわる話などを取り上げている。そこに暮らす人々やその土地を知る人向けではある。だが、案外おもしろい。根津界隈になじみのない人にも楽しめる。というのもこの地域、江戸時代に栄えたのであろう町民文化が今も息づき、多くの文人たちの足跡が残る趣のある姿を成している。

54号の根津百話と題した特集では、根津の職人、祭りや名産物と並んで、路地や子どもの遊び場といったものまで取り上げられ、町の特色の濃さに驚く。東京下町と言うだけで、ネタはつきない。また、正岡子規や林芙美子の特集など、谷根千にはこうした文人たちの集まりから、下町でも特に独特の文化がつくりあげられていることがわかる。人と町との関係を取り上げて考察し、他の地域にない特徴を打ち出しているのが興味深い。

これを読んでいると、谷根千界隈を練り歩いてみたくなり、早速雑誌を片手に千駄木界隈を訪れた。都心の雑然とした空気から外れて、暮らすための町という趣きに愛着を感じた。この雑誌にも、そこに暮らす人の愛着があらわれている。それだけに、内容が充実していると感じるのだろう。雑誌を読んで、町を歩いて、そのことにふと気づいた。(文:かわら)