「この本おもしろかったよ!」
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ちいさくなったパパ

ちいさくなったパパ

ウルフ・スタルク/文
菱木晃子/訳
はたこうしろう/絵
小峰書店
小学校高学年になってからのことだと思う。夏休み、両親が仕事に出掛けてしまうと、妹と2人自転車で20分ほどかかる公園に遊びに行った。お目当ては、新しく出来た滑り台と手動の動物型の乗り物だった。新しい滑り台は従来の滑り台と違い、細いローラーがいっぱい並べられた上を、ガラガラと滑り降りてくるもので、スピード感満点だった。わたしと妹は、飽きることなく毎日通い続けた。滑り台を滑るだけである。それでも毎朝ワクワクしていたし、公園で遊ぶことが楽しくてたまらなかった。

「どうしておとなは遊べないの?」
息子のトーマスの一言に、パパは考えてしまう。一人窓辺にたち、夜空を見ていると、流れ星が流れた。
「私を子供のときのようにしてください。一日だけでいいですから」
パパはとっさにつぶやいた。次の朝、起きるとパパは子供の姿になっていた。
この本は、子供になったパパが、少し大人の特権を使いながらも、無邪気に笑って、泣いて子供の遊びを楽しむお話。子供として、息子トーマスの友達として、パパは一日中遊ぶことになる。

果たして、大人は遊べないのか?大人になれば、それなりに楽しいこともあるし、「今度遊びに行こうよ」などという誘い文句もある。ただ、「ストレス発散でもしよう」という言葉が一緒にくっついてきたりする。何にも考えず、ただ楽しいことをして遊べたらいいなあと思う。昨日のことも、明日のことも、全部忘れて、今日一日という日を楽しく過ごせる、そんな日があったらいいなとこの本を読んでちょっとした奇跡を待っている。(文:みなりん)