「この本おもしろかったよ!」
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粗談義(あらだんぎ)

粗談義 粗捨てる愚者、粗拾う賢者

小泉武夫/著
中央公論新社
(中公文庫)
ふりがながなければ書名を「あらだんぎ」と読めない人がいるかもしれない。これは魚の粗をどうやって食べるか、どのくらいうまいか、うんちくを傾けた本である。

小泉武夫さんは日経新聞のコラムで愛読してきたが、調べてみたら食についてたくさんの本を書いていた。本書は1995年に同じ中央公論社から出版され、1999年に中公文庫になった。「あとがき」で自ら書いているように、小泉さんは小さいときから何でも食べてやろう、しゃぶってやろう、何でも噛み砕いてやろうとハイエナのような貪欲さで仰天するようなものまで食べてきた人である。したがってあだ名がいろいろ付けられていて、「歩く胃袋」から始まって「鋼の胃袋」に昇格し、「ムサボリビッチ・タベスキー」に出世し、「走る酒壺」と言われ、現在は「味覚人飛行物体」に至っている。

私は、もともと偏食で、青い魚は食べられなかったし、肉のあぶら身も駄目、まして魚の粗なぞ初めから敬遠してきたが、小泉さんのいかにもうまそうに書いているコラムにつられて『粗談義』を読むことになった。

本文は、「粗」にまつわる食談義にちがいないが、当然魚のいろいろな部分ごとに詳細な解説がある。頭部と目玉、骨、鰭、肉、血、および血合い、浮袋と胃袋、心臓と肝臓と腸、砂ずり・中落ち・腹の下、肝臓、卵巣(真子)、白子。

粗とよばれているのは魚の部分で一番美味で栄養価も高く、値段は安い、こんなすばらしい食べ物のことを知らないのは、いや食べないのは100年の損という調子で書かれているから、これまでは、はなから捨てていた部分を見直して、ためしてみようかなどと思わず考えてしまう。副書名には「粗捨てる愚者、粗拾う賢者」とある。(文:宮)