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外国人建築家の系譜 (日本の美術445号) 

堀 勇良/著
至文堂
書名の通り明治維新以来の外国人建築家の系譜を図版(写真がほとんど)を使って紹介している。われわれの同時代といってもよい建築だが、関東大震災と第二次世界大戦による戦争で大量に失われてしまった。とはいうものの本書の写真を眺めると、外国人の建築家の手による建築がいまだに随分沢山残っていることに驚かされる。今までそうとは知らずに目にしてきた建物が実は外国人建築家の手によるものであった。カラー写真で紹介されているものから私の見たことのあるものをいくつか揚げると、札幌の時計台(ホイラー)、法務省日本館(エンデ&ベックマン事務所)、立教大学本館(マーフィ&ダナ事務所+ウィルソン)など。巻末に「来日外国人建築家辞典」と名づけて簡単な経歴が紹介されているが、数えてみると92人に達する。ここに挙げられた建築家以外にもまだいるわけだから、日本の洋風建築の歴史は、多数の外国人建築家抜きには想像することもできない程、彼等の仕事に大きく深くおっていることがわかる。写真を次々に眺めていると、われわれが生活した小学校や中学校の木造校舎も、彼等の仕事の延長線上に造られたものだということがよく分かる。校舎建築はその後更にコンクリート造りに変わっていくが、今になると、あの木造建築の姿、雰囲気が懐かしいだけでなく素朴であるが、繊細な感覚の建築であったと思うのである。
失われてしまった数多くの建築を含めて、ページを練って飽きることのない楽しい本だ。
地味だが日本美術を紹介するシリーズとして40年近く続いている『日本の美術』に、これからも頑張ってもらいたい。(文:宮)