「この本おもしろかったよ!」

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猫語の教科書

ポール・ギャリコ/著
灰島かり/訳
筑摩書房
(ちくま文庫)
この夏、作家さんのお宅にお世話になる機会があり、そこで出会ったのが一匹の猫だった(女の子)。お客さんが大好きというその猫ちゃん、滞在中びとっとそばにつき、あつ〜いおもてなしをしてくれた。それは深夜まで及び、寝ている私の胸の上にどすんっ。しばらく経って肩にどすんっ。そんな状態が二晩。しかし、最終日、もう帰るとわかってからは、興味がなくなったのか、あさっての方を向いている。なんて、気まぐれな。でもそんな、彼女に出会って、すっかり猫との暮らしに憧れるようになってしまった。

しかし、それは彼女・彼らの策略であった。というのは大げさだけど。猫って実はこんなこと考えて人間と生活してんのよ、ということを綴ったのがこの作品。猫を描いた文芸作品は多いが、この本は異色。猫による猫のための猫の本。猫がタイプで打ってきた原稿を本にしましたというもので、内容はいかに人間社会をのっとるかという猫のための指南書。まさに教科書。ウィットに富んだ内容。読みようによっては、恋人とのつきあい方、うまく社会を乗り越えていく方法とか、そんなふうにも読めるおもしろみ。と、こんな風に書くとまた人間本位に捉えてと猫に怒られそうだが。

語り手である猫をおさめた写真が効いている。おそらく、この企画は写真が先にあったのだろう。
結局は猫好きによる猫好きのための猫好きの本。ちなみに訳者の灰島かりさんも大の猫好きだそうだ。(文:かわら)