「この本おもしろかったよ!」

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クレーの絵本

パウル・クレー/絵 谷川俊太郎/詩
講談社
ある書店でこの本を見てふと目が離せなくなった。一目惚れと言えばそれまでだが、本を選ぶときには必ず表紙で手に取るかどうかが決まる。表紙の装丁が良くても、手にとって何頁かパラパラめくると想像していた内容と余りにも違ったり、読みづらかったりする。またはその逆もあって、表紙の装丁よりもタイトルに惹かれて同じように頁をめくると、想像以上に内容が良かったり今の自分が欲していた内容だったりと、下手をしたらその日の天気でによってさえ選ぶ本が変化してしまうことさえある。少しページをめくってみると、絵本というタイトルはついているが、どちらかというと詩画集と言った方がいいかもしれない。

私は基本的に詩を好んで読む方ではないが、子供の頃から児童書で親しんできた谷川俊太郎さんの詩となれば話は別である。芸術のうんちくは全く語ることはできないし、詳しくもない。さらに言ってしまえば、クレーを知ったのもここ最近のことである。だが、クレーの絵と谷川俊太郎さんの詩が出逢ったことにより完成したこの本は、日常の生活の中ではあまり抱くことのない感情が心から溢れ出してくるような気がする。ふと時間を忘れて詩を読んでから絵を観たり、絵を眺めてから詩を味わってみたり、絵と詩を同時に鑑賞したりと、何度も何度も繰り返してしまう。どうしてここまで惹きつけられてしまうのかは、あとがきである「魂の住む絵」を読むことによって少し納得させられる。

−−−私はクレーの絵の中に、日々の生活の現実からかけ離れていながら、人をそこに立ち戻らせる深い感情を見ていた。  −中略−   それらの題名もまた絵そのものと同じく、謎に満ちながら私のうちに喜怒哀楽とは違う名づけ難いある感情を呼び覚ましたのである。−−−−
                                 
(『クレーの絵本』のあとがき「魂の住む絵」より抜粋)

私の中のどんな感情がこの絵本を選ばせ、繰り返しページをめくってしまうのか謎を残しつつ、惹きつけられるようにこの本を開く時がまた訪れる気がしてならない。(文:リュウ)