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「この本おもしろかったよ!」
1ヶ月に約1冊のペースで朔北社出版部の3人がお気に入りの本を紹介。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

。本のジャンルは様々なので「本を買う時の参考にしてくれればいいな。」という、ひそかな野望がつまっているコーナー。

【紹介した書籍に興味をお持ちの方へ】 この本は朔北社の出版物ではありませんので、出版状況等に関しましては、お近くの書店、あるいは各出版社にお問い合わせ下さい。

ねむいねむいねずみのクリスマス 

ささきまき/さく・え

PHP研究所


   夏のような暑い日が続いているというのにクリスマス…季節感のない紹介で失礼します。「佐々木マキ」という名前を初めて目にしたのはいつだっただろうか?おそらく10代の頃だと思うのだが、その時には、佐々木マキ=女の人だとずっと思っていた。今の会社に入り児童書に触れる機会も増えマキさんが男の人で、本当にびっくりした。
 今やっている編集仕事の中で、誰かが佐々木マキの絵本のことを書いている記事を読んでいたら、無性に作品を読みたくなった。そんなわけで図書館に何冊かの絵本を予約し、今手元にある。ナンセンス絵本を描く絵本作家はたくさんいるが、作品を見ずに顔を見てナンセンス絵本作家をあてるゲームがあれば、わりといい確率で当てられそうな気がしている。ただ、佐々木マキさんだけは別だ。なんの知識もなく見たら絶対そういう絵本を描くタイプと思えないのだ。プロィールなどに使っている写真だけがそうなのか?普段からそういう表情なのか?お会いしたことがないのでわからないが、とにかくその顔はまじめ一本で生きてきましたというように見える。もちろんダジャレのダの字もいいそうにない表情なのだ。真面目な研究者とか大学の先生とか、NHKの解説者とかいわれればそうですよねえ。と相槌をうって賛同するだろう。「ああやっぱり、そういうお仕事ですか」と。すでに顔で裏切られているのだ。このギャップはいったい…。顔で描くわけではないけれど、彼をつくる、体のどのへんで、頭のどのへんで、こんなことを考えているのだろうか。
 借りてきた絵本の一冊は『ねむいねむいねずみのクリスマス』ねずみは雪のふる寒い中を旅している。ねむいねむい、そしてさむい…この欲求を経験したことがない人はいないのではないだろうか。わたしなんか毎日その戦いだ。さむいとか、あついとか、一番は、やはり「ねむい」とのたたかい。「おなかがすいた」が加われば最強欲求だ。と思っていたところ。やっぱり最後にねむいねむいねずみはおなかがすくのだった。なんて健全な物語だろうと思う(そう思うのは私だけか?)。ねむくてさむいときにサンタのそりに乗りこんだねずみ。クリスマスにプレゼントをサンタからもらうのかとおもいきや…。なんともおかしいけれど、現実味たっぷりのラスト。現実味たっぷりなのにシュール。あたりまえの生活の中にこそ、日々このおかしさが含まれているのかもしれない。(文:やぎ)