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「この本おもしろかったよ!」
順番やペースは狂いがちですが約1ヵ月に1冊のペースで朔北社の社長である宮本と、出版部の2人のM子の総勢3人が順番にお気に入りの本を紹介。本のジャンルは自由。本を読む楽しみを共有したり、誰かの本を読むきっかけになったらいいなと思っている。

音楽家の世界 クラシックへの招待

吉田秀和/著


河出文庫 2023

 1950年に刊行された本の最新文庫版である。著者の作品を長年愛読してきたが、著者が30歳代に書いた本だが、正直で自己の経験に基づいた叙述は慣れ親しんだ文章そのままである。
 目次をみると近代西洋音楽の主要作曲家の名前とその代表曲が並んでいる。バッハ、モーツァルト、べートヴェン、ドビュッシーの4人だけ3曲取り上げるかたちになっているが、本文を読むと曲目を解説するというより、簡潔な西洋音楽史だ。クラシックの歴史の中で、その作曲家がどんな位置をしめていて、それはしかじかの仕事をしたからだと的確に指摘していく。
 文庫版解説の渡辺和彦さんはバッハの「平均律クラヴィーア曲集」について「バッハ以前の西洋音楽史の基本的な流れとバッハ以後現れたもろもろのことのエッセンスがコンパクトにもりこまれ……「なるほどそういう世界と音楽か」と得心するだろうし、そうでない人には新たな発見があるはずだ。」と述べている。そして、解説文のタイトルを「時を超えた価値を持つ本格入門書」としている。通読して、70年以上前に書かれた本が新たに文庫本として刊行されたことが納得できる。(文:宮)

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